なぜルーマニアは「羅馬尼亜」と書かれるのか?日本語の漢字表記を文化的に解説

借用語

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

外国人にとって、日本語での国名の漢字表記は不思議に思えるかもしれません。ルーマニアはその一例で、「羅馬尼亜」という当て字が使われます。これは日本独自の言語文化に根ざしたものです。本記事では、この表記の成り立ちや使われ方を、日本語を学ぶ人や文化に興味のある人に向けて紹介します。

ルーマニアの漢字表記「羅馬尼亜」の由来

「羅馬尼亜」という表記は、ルーマニアという国名を日本語の音に近づけるために作られました。それぞれの漢字は次のように割り当てられています。

漢字読み対応する音
Ru の部分
ma の部分
ni の部分
a の部分

このように分けて読むと「ラ・マ・ニ・ア」となり、ルーマニアの音を日本語で表せるようになっています。意味ではなく音を重視した表記であることが最大の特徴です。


当て字としての役割

当て字は日本語の特徴的な文化のひとつで、外国語の音を漢字に置き換える方法です。特に国名や地名、人名などによく使われてきました。

以下の例を見れば、ルーマニアの「羅馬尼亜」がどのような流れで生まれたのかが理解しやすいでしょう。

国名(カタカナ)漢字表記特徴
アメリカ亜米利加発音を分割して当てはめた
イギリス英吉利英の一字を略称として使用
フランス仏蘭西fu-ra-n-su を音で表現
ドイツ独逸簡略化された音写

羅馬尼亜も同じ仕組みで作られたものであり、意味翻訳ではなく音声模写に基づいた表記です。


なぜ「羅」と略されるのか

「羅馬尼亜」は四文字とやや長いため、新聞や外交関連の文書では「羅」だけで表す略称が使われることがあります。

同じように、一文字だけで国名を示す例は多く存在します。

漢字略称対応する国名漢字表記
アメリカ亜米利加
イギリス英吉利
フランス仏蘭西
ドイツ独逸
ロシア露西亜
ルーマニア羅馬尼亜

このように略称が成立したのは、新聞紙面の省スペース化や見やすさのためです。


外国人が理解すべきポイント

外国人が「羅馬尼亜」という表記を理解するために押さえておきたい点は次のとおりです。

  1. 意味を表していない
    各漢字に個別の意味はありますが、ルーマニアという国の特徴や歴史を反映しているわけではありません。
  2. 現代ではほとんど使われない
    戦後はカタカナ表記が主流となり、現在では「ルーマニア」と書くのが標準です。
  3. 略称の「羅」がある
    新聞や資料の中では「羅」だけで国名を指す場合があります。

ルーマニア表記の文化的背景

漢字文化圏における外国名の表記は、単なる置き換え以上の意味を持ちます。漢字に置き換えることで、外国の存在を日本社会により親しみやすく導入してきました。

特に明治から昭和初期にかけては、新聞や雑誌が国民の主要な情報源であり、カタカナよりも漢字のほうが文章に溶け込みやすく、見やすいとされました。そのため、国名や人名は積極的に漢字で表されていたのです。


他の言語との比較

漢字文化圏では似たような表記が存在します。

  • 中国語ではルーマニアを「罗马尼亚」と表記します。
  • 韓国語の漢字表記でも「羅馬尼亜」が使われることがあり、日本とほぼ同じ形です。

このように、ルーマニアの漢字表記は東アジアに共通する特徴を持っているのです。


当て字文化の広がり

当て字は国名だけでなく、都市名や人名にも用いられてきました。

地名・人名漢字表記説明
カリフォルニア加利福尼亜California の音写
ワシントン華盛頓Washington を当て字化
シドニー悉尼Sydney の音を漢字に置換

これらはすべて意味よりも音を優先して作られたものです。ルーマニアの「羅馬尼亜」もこの一例に過ぎません。


まとめ

ルーマニアを「羅馬尼亜」と表記するのは、音を漢字で表す当て字の文化に基づいたものです。現代ではカタカナ表記が一般的であり、漢字表記は歴史的資料や古い新聞でしか見かけません。しかしこの表記には、外国の言葉を日本語に取り入れる際の工夫や、漢字文化圏の独自性が色濃く表れています。

「羅馬尼亜」という表現は、単なる古い言葉ではなく、日本語と世界のつながりを示す一つの文化的遺産ともいえるでしょう。外国人が日本語を学ぶ際、この表記を知ることで日本語の奥深さと歴史的背景をより深く理解できるはずです。