引きこもりとは?日本特有の社会現象とその課題

借用語

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

「引きこもり」という言葉は日本発の概念で、今ではそのまま世界でも通用する用語となっています。これは単に部屋に閉じこもる行為を指すのではなく、日本社会の文化や家庭環境が生み出した現象です。本記事では引きこもりの定義や背景、そして社会的な位置づけについて解説します。

引きこもりの定義

引きこもりは、主に若者や成人が自宅に長期間とどまり、学校や職場などの社会活動に参加しない状態を指します。6か月以上外出を避けることが特徴とされており、単なる休養とは区別されます。
心理的な要因や人間関係の問題が影響し、社会に戻りたくても戻れない状況になる場合があります。誤解されやすいですが、怠けではなく深刻な孤立の結果として現れることが多いのです。


日本社会での背景

日本は集団生活を重んじる文化を持っています。そのため、学校や職場での人間関係や期待に応えられなかった経験が、深い挫折感につながることがあります。結果として、外との接触を避け、自宅にとどまるという選択に至るのです。

また、日本の家庭では成人しても子どもを経済的に支える傾向があり、引きこもりの長期化を可能にしています。これは海外と大きく異なる特徴です。


引きこもりの社会的位置づけ

引きこもりは現在、日本全体の社会問題として認識されています。推計では数十万人規模の人が引きこもりの状態にあるとされ、若者だけでなく中高年にも広がっています。特に就職氷河期世代は社会からの孤立が深刻で、将来の生活不安と重なっています。

社会的には「病気」だけでは説明できない現象と考えられており、政府や自治体は支援体制の整備を進めています。


引きこもりの分類

引きこもりはその状況に応じていくつかのタイプに分けられます。

分類特徴
短期的引きこもり数か月以内で一時的。受験や就職の失敗が要因となる
長期的引きこもり6か月以上継続。家族の支援があり生活が続く
超長期的引きこもり5年以上続く。社会復帰が難しく専門的支援が必要
潜在的引きこもり外出はするが学校や職場に関わらない

家族への影響

引きこもりの問題は本人だけでなく家族全体に重い負担をもたらします。生活を支える経済的負担に加え、世間から理解されにくいことによる孤立感も深刻です。特に親の高齢化に伴い「子どもが自立できないまま親が介護を必要とする」という事態が増えています。

家族が抱える悩みを整理すると以下の通りです。

家族の負担具体例
経済的長期間働かない子を支えるため生活費が増える
精神的社会からの孤立感や将来への不安が強まる
身体的高齢の親が子どもの世話を続け体力的に消耗する

海外との違い

欧米でも自宅にこもる人は存在しますが、日本のように社会全体の現象として「引きこもり」が語られることは少ないです。理由のひとつは家族の経済的支援にあります。欧米では成人後は独立するのが一般的で、長期的に家族が支える仕組みが少ないため、日本のような長期化は起こりにくいのです。

比較のために整理すると次のようになります。

日本欧米
家族が長期的に生活を支える成人後は基本的に独立
「引きこもり」という社会的概念がある個別の心理問題として扱われやすい
社会全体で問題視される個人の選択とされる場合もある

政策と支援の取り組み

日本政府は、実態調査を行い、各地に支援センターや相談窓口を設けています。カウンセラーや福祉関係者が家族とともに解決策を探る仕組みが広がり、オンライン相談や地域の居場所づくりも進んでいます。

支援の内容は次のように分けられます。

支援の種類内容
相談窓口本人や家族が匿名で相談できる場を提供
居場所づくり地域で安心して人と関われる場所を提供
就労支援少しずつ社会に出るための訓練や職業体験
家族支援親やきょうだいに対するカウンセリング

まとめ

引きこもりは単なる「部屋に閉じこもる」行為ではなく、日本社会の文化や家庭環境と密接に結びついた現象です。本人の心理的問題だけでなく、社会の仕組み、家族の在り方が影響しています。
今後は、本人への支援に加えて家族全体を含めたアプローチが重要です。社会全体が理解を深め、共に解決へ向かう姿勢を持つことが、問題の軽減につながるでしょう。