映画「ハルビン」に対する日本人の評価とは?外国人が理解すべき3つのポイント

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監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

韓国で制作された映画「ハルビン」は1909年に起きた伊藤博文暗殺事件を題材にしています。2024年に韓国で公開され、2025年7月には日本でも上映されました。映画は韓国独立運動家の安重根の信念と葛藤を描き、日本では肯定と否定の意見が交錯しています。本記事では、その日本人の評価を外国人向けに整理して解説します。

映画「ハルビン」とは

「ハルビン」は韓国の歴史観に基づいて制作された作品であり、主人公の安重根は韓国では国民的英雄として語られます。映画では伊藤博文暗殺という事実だけでなく、安重根が抱えていた信念や仲間たちの絆、そして行動に至るまでの心理的な葛藤が詳細に描かれています。映像表現は壮大で緊張感を持続させる工夫が随所に施され、韓国では高評価を受けました。一方、日本では伊藤博文が近代国家の基礎を築いた指導者とされるため、映画に対する受け止め方が分かれる結果となりました。


日本人の評価の二つの傾向

日本での反応は肯定的評価否定的評価の二つに分かれます。肯定的に捉える観客は、この映画を歴史を学ぶきっかけや異なる視点を知る機会と評価します。若い世代や教育関係者の中には「日韓の歴史的対立を知る教材として有効だ」と語る人もいます。映画としての完成度、サスペンス性、緊迫感あふれる映像美も肯定要因です。
一方で否定的評価をする観客は「暗殺を美化している」「日本の歴史観を軽視している」と考えます。伊藤博文は日本史上重要な政治家であり、彼の死を英雄的に描くことは不快感をもたらすと感じる人も少なくありません。このため作品は単なる映画を超えて政治的意味を帯びてしまうことがあります。


肯定的に受け止める日本人の見方

肯定的な立場を取る人々は、この映画を対話と理解の入口と考えています。安重根は韓国の独立運動を象徴する人物であり、彼の行動背景を知ることで「なぜ韓国人が独立を求めたのか」を理解する手がかりになると評価します。映画としてのエンターテインメント性も高く、重厚なドラマ性と緻密なサスペンス展開が観客を引き込みます。結果として歴史を学ぶ動機付けとなり、上映後の議論や感想交換が教育的に価値ある時間になったという声が聞かれます。


否定的に受け止める日本人の見方

否定的に見る日本人は、この映画を政治的に偏った作品と捉えます。伊藤博文は憲法制定や近代化に貢献した指導者であり、日本人にとっては功績の大きい政治家です。その人物を「敵」として扱い暗殺を肯定するかのように描く点に違和感を持つ観客は多いです。さらに、日本側の状況や外交的背景が描かれないため、韓国の一方的な視点が強調されていると受け止められます。歴史認識の違いを理解する材料ではなく、かえって日韓の溝を広げる懸念があるという見方です。


日本人の意見を整理した表

観点肯定的な評価否定的な評価
歴史教育独立運動を理解する機会になる歴史観が一面的で不十分
安重根の描写信念と葛藤を持つ人物像が伝わる暗殺を美化している
伊藤博文の扱い日韓関係を学ぶ材料になる日本の政治家を軽視している
映画体験サスペンス映画として楽しめる政治的メッセージが強すぎる

公開と受容の比較

項目韓国日本
公開時期2024年2025年7月
主な関心点独立運動の象徴的物語歴史観の相違
観客の受け止め英雄像への共感賛否が分かれる

外国人が理解すべきポイント

外国人がこの映画への日本人の反応を理解するうえで大切なのは「歴史観の違い」です。韓国では安重根は英雄であり、日本では伊藤博文は国の近代化を支えた指導者とされています。そのため、同じ事件を題材とする映画が国ごとに異なる意味を持ちます。さらに日本人の評価も一枚岩ではなく「学びのきっかけ」と見る立場と「偏った歴史観」と見る立場が共存します。映画の映像美やドラマ性が純粋に楽しめる要素である点も理解しておくとバランスの取れた見方ができます。


評価を分ける背景

要素日本での一般的傾向韓国での一般的傾向
主人公の位置づけ暗殺者として認識独立運動の英雄
伊藤博文の評価近代化に貢献した政治家植民地支配の象徴
歴史教育功績を重視抵抗を重視
映画の焦点暴力の是非と秩序独立と抵抗の正当性

鑑賞のヒントと注意点

映画を鑑賞する際には史実を簡単に把握しておくと登場人物の動機を理解しやすくなります。また登場人物の心理描写が重視されているため、単なる善悪で判断せず「なぜその選択をしたのか」を考えると深みが増します。肯定派も否定派も共通して高く評価したのは映像美と緊迫感でした。観客は映画を通じて歴史だけでなく人間の信念と葛藤に触れることができます。


まとめ

映画「ハルビン」は日本と韓国の歴史観の違いを鮮明に浮き彫りにする作品です。日本人の評価は「学びのきっかけ」として肯定する意見と「歴史の偏向」として否定する意見に分かれています。外国人が理解すべきなのは、この評価の分岐自体が日韓の歴史的立場の違いを映し出しているという点です。作品は歴史的事実を軸にしながらもサスペンス映画としての完成度を持ち、教育的にも娯楽的にも価値を兼ね備えています。鑑賞後に意見を交わすこと自体が歴史を理解する一歩となり得るでしょう。