ステーブルコインとは?円建てや米ドル建ての違い、アメリカの規制動向までわかりやすく解説

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監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

ステーブルコインとは、価格の安定を目指して設計された暗号資産であり、仮想通貨のボラティリティを抑えつつ、ブロックチェーンの利点を享受できる新しい通貨の形です。特に米ドル建てが国際的に広く普及する一方で、日本でも円建てステーブルコインの開発が進み、法整備と実証実験が動き出しています。本記事では、その仕組み、種類、活用法、そして日本とアメリカの違いをわかりやすく解説します。

ステーブルコインとは何か

ステーブルコインは、価格の安定を目的とした暗号資産であり、特定の通貨や資産と連動することでその価格を保ちます。代表的な例としては、USDT(テザー)USDC(サークル)があり、いずれも米ドルと1対1で価値が連動しています。暗号資産市場における変動の激しさを緩和する手段として、トレード時の一時的な避難先や、送金・決済手段として活用されています。

以下に、ステーブルコインと他の暗号資産の特徴を比較します。

項目ステーブルコインビットコイン/イーサリアムなど
価格の安定性高い(1通貨単位に連動)低い(需給により大きく変動)
利用目的送金、決済、価値保存投資、投機
信頼性担保資産の有無により異なるブロックチェーンの分散性で担保
発行体企業、団体などが中心プロトコル主導

ステーブルコインの種類と特徴

ステーブルコインは主に以下の3タイプに分類されます。それぞれに設計思想や運用方法が異なり、メリットとデメリットが明確に存在します。

タイプ担保資産メリットデメリット
法定通貨担保型米ドル、円など高い信頼性とシンプルな構造担保資産の保管コスト、規制の影響
暗号資産担保型ETH、BTCなど分散型で透明性が高い担保資産の変動リスク
アルゴリズム型担保なし(需給調整)自律的に調整可能信頼性が低く価格崩壊の例も

日本円建てステーブルコインの現状

日本では、資金決済法に基づき、ステーブルコインの開発・発行が法的に明確化されています。JPYC、DCJPY、Progmat Coinなどが国内で注目されています。

コイン名発行主体担保方法用途・実証例
JPYCJPYC株式会社事前入金方式キャッシュレス決済、NFT取引
DCJPYディーカレット信託銀行管理地域通貨としての活用、実証実験中
Progmat Coin三菱UFJ信託銀行預金担保型金融機関同士の決済など

円建てコインは信頼性と法令遵守の観点から世界的にも珍しく、今後、行政、自治体、企業での活用が進めば日本のキャッシュレス社会推進の鍵となる可能性があります。

アメリカのステーブルコイン市場の現状

アメリカでは、USDTやUSDCなどの米ドル建てステーブルコインが圧倒的なシェアを持ち、仮想通貨取引の基軸通貨として機能しています。取引所間の資産移動や、国際送金、分散型金融(DeFi)における取引単位としての活用が進んでいます。

コイン名発行体流通規模(概算)特徴
USDTTether社約10兆円規模最も利用されているステーブルコイン
USDCCircle社約5兆円規模透明性が高く、監査報告を定期公開
BUSDBinance約2兆円規模2023年から徐々に市場縮小

米国ではこれらのコインが日常的に使われており、既に「仮想的な米ドル」として定着しつつある現実があります。

アメリカにおけるステーブルコインの規制動向

現在のアメリカでは、ステーブルコインに対する統一された規制枠組みが存在しないのが課題です。SECやCFTC、財務省などが個別に対応しており、発行体の多くは自主的な透明性確保や第三者監査を行っています。

課題点現状
規制の不統一各当局が異なる判断軸を持ち対応が分かれる
信頼性の確保発行体によって監査・担保状況が異なる
利用者保護法的整備が追いついていない

今後、発行ライセンス制度や準備金規定の法文化が進めば、金融市場との接続がさらに強固になると見込まれます。

円建てと米ドル建てステーブルコインの違い

ステーブルコインは、通貨単位の違いによって対象ユーザーや利用目的が大きく異なります。円建ては国内利用に適しており、米ドル建てはグローバル市場向けです。

項目円建てステーブルコイン米ドル建てステーブルコイン
想定利用者日本国内の個人・企業国際市場、仮想通貨投資家
利用範囲行政サービス、地域通貨、店舗決済国際送金、DeFi、取引所
信頼性銀行・政府支援の高い安定性担保や運用体制により差異あり

市場の成熟度は異なるものの、それぞれの社会・経済システムにおいて重要な役割を担っているのは共通しています。

ステーブルコインがもたらす可能性と課題

ステーブルコインは、次世代の金融基盤としての可能性を持ちます。金融包摂、越境送金、トークンエコノミーへの導入など、具体的なユースケースも広がっています。

活用領域期待されるメリット
国際送金手数料削減、即時着金
給与支払いリアルタイム支給、時間外手当の即時反映
小売・決済キャッシュレス決済、個人間送金
トークン報酬アプリ内インセンティブとしての活用

同時に、価格の乖離や規制リスク、セキュリティ課題にも向き合う必要があり、信頼性と透明性の確保が最大の鍵です。

まとめ

ステーブルコインは、価格の安定性とブロックチェーン技術の利便性を両立する革新的な仕組みです。特に米ドル建てがグローバルで広く使われる一方で、日本円建ても法制度に支えられた堅実な発展を見せています。

今後、中央銀行デジタル通貨(CBDC)との連携や、国際的な法制度の整備が進めば、ステーブルコインは国境を越えるデジタル経済の基盤として、より多くの人々に恩恵をもたらすでしょう。