「おしん」に対する日本人の評価とは?海外から見た魅力とその背景

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監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

1983年に放送されたNHKの連続テレビ小説「おしん」は、日本国内で空前の人気を博し、国民的ドラマと呼ばれる存在となりました。その後はアジアを中心に海外でも放送され、多くの視聴者に感動を与えています。本記事では、日本人が「おしん」をどのように評価してきたのか、その理由と背景を解説します。

おしんとは何か

「おしん」は、1983年4月から1984年3月までNHKで放送された全297回のテレビドラマです。主人公のおしんが明治から昭和にかけての激動の日本社会を生き抜く姿を描いています。

おしんの人生の主要な出来事

時期出来事意味
幼少期奉公に出され極貧生活を送る忍耐と努力の象徴
青年期商売に挑戦し失敗と再起を繰り返す自立と挑戦の精神
壮年期家業を成功させ一家を支える女性の経済的自立を示す
老年期家族の葛藤を抱えつつ生き続ける家族愛と人生の重み

おしんの歩みは、日本人にとって「苦労を重ねても希望を失わない人生」のモデルとして受け入れられました。


日本人が感じたおしんの魅力

忍耐と努力の象徴

おしんは、幼少期から逆境に直面し続けながらも希望を捨てず努力を重ねます。「我慢」「努力」「家族のための献身」という日本人の伝統的な価値観と結びつき、視聴者の心を強く打ちました。

家族と絆の物語

母親の愛情や子どもとの関係、世代を超えたつながりは、日本人が大切にしてきた「家族の絆」を思い起こさせました。ドラマを見ながら涙を流した視聴者は少なくありません。

女性の自立と強さ

おしんは家庭にとどまらず、商売を立ち上げ成功させます。当時の日本社会では珍しかった「自立する女性像」を体現し、多くの女性視聴者に勇気を与えました。


日本社会に与えた影響

項目影響日本人の反応
家族観三世代同居や親子の絆を再評価「家族の支えが生きる力になる」との共感
労働観苦労を乗り越える姿勢の再認識「努力すれば報われる」という信念が強化
女性の役割家庭と社会の両立が描かれる「女性の可能性を広げる存在」として評価
社会意識貧困や格差への関心が高まる当時の日本人に過去を振り返る契機を与えた

おしんは単なるドラマを超え、社会的な価値観の見直しを促す作品となったのです。


日本人の評価の変遷

時期日本人の評価背景
放送当時(1980年代)涙と共感を呼び、国民的ドラマとして称賛高度経済成長を終え、過去の貧困を思い出す時代
1990年代以降海外での人気に驚き、再評価アジアを中心に「おしんブーム」が拡大
現代忍耐は尊重されつつも「過度な我慢」との批判も多様な生き方が認められる社会へ変化

海外放送と日本人の反応

「おしん」は世界68か国で放送されました。特に台湾、中国、インドネシア、イランなどで大きな人気を博しました。貧困から立ち上がる姿が各国の歴史と重なり、多くの人々に共感を呼んだのです。

海外での評価と反応

国・地域反応日本人の感じ方
台湾国民的ドラマとして熱狂的支持日本文化が共有できると誇りを感じた
中国放送時の視聴率が非常に高い歴史的背景の共通性を認識
イラン社会の不平等と結びつけて共感「おしんの精神は普遍的」との評価
インドネシア若者の間でも人気が拡大日本人としての価値観が理解されたと実感

日本国内では「自国のドラマが海外で受け入れられた」という誇りが広がり、「おしん」は文化交流の架け橋とされました。


おしんが現代社会に与える示唆

現代日本では「我慢が美徳」という価値観は弱まりつつありますが、困難を前にしたときにどう立ち向かうかは今も普遍的な課題です。おしんは「無条件に耐えること」ではなく、「逆境を力に変える姿勢」を示した作品といえます。

東日本大震災の際には「おしんのように生きよう」という言葉がメディアでも取り上げられ、多くの人に勇気を与えました。今日の視点から見ても「おしん」は教育的価値があり、海外の人々にとって日本文化を理解する手がかりになります。


まとめ

「おしん」は日本人にとって、忍耐と努力の象徴であり、また家族愛や女性の自立を描いた社会的な教材のような存在です。放送当時の涙と共感、海外での成功、現代における再解釈を経て、その価値は今も失われていません。

外国人にとって「おしん」を知ることは、日本人の価値観や歴史を理解するうえでの重要な入り口となるでしょう。