ワンピースの聖地「スモーキーマウンテン(フィリピン)」ルフィ・エース・サボが幼少期を過ごしたゴア王国のゴミ山「グレイターミナル」のモデル

コンテンツ産業

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

『ONE PIECE(ワンピース)』の物語の中でも、多くのファンの心に残るのがルフィ・エース・サボの幼少期を描いた「グレイターミナル」です。
この場所のモデルとされるのが、かつてフィリピン・マニラ郊外に実在した巨大なごみの山「スモーキーマウンテン」
社会の闇を映し出す現実の場所が、どのようにしてワンピースの世界観に結びついたのかを、歴史的背景とともに詳しく解説します。

スモーキーマウンテンとは

スモーキーマウンテン(Smoky Mountain) は、フィリピン・マニラのトンド地区にあった巨大なごみの山で、1970年代から1990年代にかけて形成されました。
都市部で排出された大量の廃棄物が長年蓄積し、最終的には高さ30メートルを超える「山」となりました。

この地では約2万人が生活しており、人々は廃棄物を資源として再利用することで生計を立てていました。
ごみの発酵や分解により煙が絶えず立ち上り、まるで山が燃えているように見えたことから「スモーキーマウンテン」と名付けられました。

項目内容
所在地フィリピン・マニラ市トンド地区
形成時期1970年代〜1990年代
主な問題火災・悪臭・感染症・児童労働
閉鎖時期1995年(再開発計画により)
現状住宅地・学校・公園として再整備

環境汚染や火災が頻発し、健康被害も深刻化しましたが、それでも人々は「ここでしか生きられない」現実の中で懸命に生き続けました。


グレイターミナルのモデルとされる理由

ワンピースに登場するグレイターミナルは、王国の中心部から隔離された場所にある巨大なごみの山で、富裕層が不要になったものをすべて捨てる場所でした。
そこでは貧しい人々が生活し、ルフィ・エース・サボの3人が幼少期を共に過ごした地として描かれています。

この構造はスモーキーマウンテンと非常によく似ています。どちらも社会の底辺を象徴する場所であり、「人間の尊厳」や「格差社会の現実」を示す存在です。

比較項目グレイターミナルスモーキーマウンテン
位置ゴア王国の外れマニラ郊外トンド地区
居住者貧困層の人々リサイクルで生計を立てる家族
環境ごみ山・煙・悪臭有毒ガス・高温・不衛生
象徴階級差と自由の対比貧困と格差の象徴

尾田栄一郎氏がこの場所をモデルに選んだ背景には、「人は生まれた場所で価値が決まるのか」という社会への問いかけが込められているとも考えられます。


当時のスモーキーマウンテンの生活

スモーキーマウンテンでは、家族全員が廃棄物を拾って生活していました。
早朝からごみ収集車が来ると、人々は競い合うようにして再利用できる物を探し始めます。金属・プラスチック・紙などを分別し、業者に売ることで1日の生活費を得ていました。

内容実情
平均収入1日あたり約100〜200ペソ(日本円で300〜600円ほど)
主な仕事ごみ拾い、仕分け、資源回収
主な居住形態トタン屋根の掘立て小屋
衛生環境水道・トイレなし、感染症多数
危険要素火災・崩落・ガス爆発・怪我

こうした環境の中でも、人々は助け合い、笑顔を絶やさず暮らしていました。貧困の中でも「人と人との絆」が強く、生きる力の象徴ともいえる場所でした。


フィリピン社会が抱える現実

スモーキーマウンテンは、フィリピンが抱える経済格差と都市貧困を象徴しています。
都市の中心では高層ビルが立ち並び、外資系企業が進出する一方で、その陰にごみ山で生きる人々がいたのです。

政府は再開発を進め、住宅建設や職業訓練を行いましたが、根本的な貧困問題は完全には解決されませんでした。

社会問題内容
所得格差富裕層上位10%が国の収入の約40%を占める
教育機会の不足子どもの多くが働きに出て学校に通えない
都市への人口集中地方から職を求めてマニラに移住
衛生と医療感染症や栄養不良が深刻化

こうした現実が、ワンピースの「自由」「差別」「平等」というテーマの根底に重なっています。


ゴア王国とスモーキーマウンテンの社会構造の共通点

ワンピースのゴア王国では、中央の清潔な都市と、外れのごみ山の対比が強調されています。
富裕層が裕福な生活を送る一方、外の世界では貧困層がごみの中で暮らしています。
この構造は現実のマニラとほとんど同じです。

比較項目ゴア王国マニラ(スモーキーマウンテン)
中心部の姿貴族が住む清潔で豊かな町富裕層が集まる商業地域
外部地域ごみ山と貧民街廃棄物処理地帯とスラム
社会的対立階級差・差別意識貧困と排除の現実
象徴的意味自由を奪われた者たちの反発経済の犠牲になった人々

ゴア王国を通して描かれる世界は、現実社会の縮図でもあります。ワンピースの物語が多くの読者の心を動かすのは、ファンタジーでありながら現実の痛みを感じさせるからです。


スモーキーマウンテンのその後と再開発

1995年、スモーキーマウンテンは政府によって正式に閉鎖されました。
しかし、それで終わりではありませんでした。住民の多くは近隣の「ペイタスダンプサイト」などの新しいごみ山に移り住み、同じような生活を続けています。

再開発では、スモーキーマウンテン・ハウジングプロジェクトが実施され、住宅や学校が建設されました。現在では観光地として訪れる人も増え、当時の写真や記録が展示されています。

年代出来事
1970年代ごみの集積が始まる
1980年代ごみ山が拡大し、住民が定住
1995年政府が閉鎖を決定
2000年代再開発・住宅建設開始
現在住宅地と教育施設が整備される一方、貧困は継続

再開発の成果は見られるものの、完全な解決には時間がかかっています。それでも、人々の努力によって少しずつ環境が改善されつつあります。


ワンピースに込められたメッセージ

グレイターミナルは、単なる背景ではなく、人間の尊厳と希望を描いた象徴的な舞台です。
ルフィ・エース・サボの3人は、貧困の中でも「自由に生きたい」という強い信念を持ち続けました。

「人は生まれた場所で価値が決まらない」というワンピースの根底に流れるメッセージは、スモーキーマウンテンで生きる人々の現実と深く重なっています。

この場所をモデルとすることで、尾田氏は現代社会に生きる私たちに、「どんな環境でも夢をあきらめるな」という強いメッセージを伝えています。


まとめ

スモーキーマウンテンは、フィリピンの貧困と希望を象徴する実在の地です。
ワンピースの「グレイターミナル」は、その現実をモチーフにしながら、人間の自由・平等・絆を描いた物語として多くの人に感動を与えています。

現実の苦しみと向き合いながらも希望を失わない人々の姿は、ルフィたちの生き方と重なります。
彼らの原点は、ごみ山という過酷な環境の中で育まれた「強さ」と「優しさ」です。

ワンピースを通して見えてくるのは、貧困や差別を超えて生きる力、そして「自由に生きる」ことの大切さです。
スモーキーマウンテンという場所は、今もなお世界中の人々に、生きる意味と希望を問い続けています。