ペルーを日本語で「秘露」と漢字表記する理由とは?外国人にもわかる当て字文化について解説

借用語

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

日本語ではペルーを「秘露」と表記することがあります。この文字は意味ではなく音を写した当て字であり、歴史的な背景を持っています。本記事では「秘露」という表記が生まれた経緯や、日本語の外来語表記の特徴をわかりやすく紹介します。

「秘露」という表記の由来

「秘露」という表記は、ペルーという音を日本語の漢字で置き換えたものです。

  • 「ペ」=「秘」
  • 「ルー」=「露」

この組み合わせによって生まれました。漢字本来の意味である「秘密」や「あらわれる」といった概念は、ペルーという国とは関係がありません。

明治時代以降、日本が西洋と急速に交流する中で、外国の国名をどう表すかが課題となりました。当時はまだカタカナが広く使われていなかったため、学術文書や外交記録では漢字による表記が主流でした。結果として、ペルーは「秘露」と書かれるようになったのです。


外国名を漢字で表した日本の習慣

日本語では多くの国名が一度は漢字で表記されました。これは、漢字が権威ある文字として重視されていたためです。特に外交や教育の場では、カタカナよりも漢字が正式とされました。

主な国名の漢字表記一覧

国名(カタカナ表記)漢字表記読み方特徴
ペルー秘露ひろ音の響きをそのまま写す
ポルトガル葡萄牙ぶどうが葡萄の字は偶然の一致
スペイン西班牙せいばんが音を優先した当て字
イギリス英吉利えいぎりす「英」に優秀の意味が重なる
フランス仏蘭西ふつらんす仏教の仏とは関係なし
ドイツ独逸どいつ「独」が強国の印象に合う

この表を見ると、意味よりも音の近さを重視していたことがわかります。


なぜカタカナではなく漢字が使われたのか

現代ではカタカナで「ペルー」と書くのが普通ですが、かつては漢字が選ばれました。その理由は以下の通りです。

漢字が選ばれた理由

理由詳細
権威性漢字は正式な文書に適していると考えられた
慣習江戸時代からの漢文教育が背景にあった
視覚的効果カタカナより重厚で読みやすい印象を与えた
音写の便利さ漢字の多様な音を利用し、外国語の響きを再現した

この背景を理解すると、「秘露」が単なる偶然の文字の組み合わせではなく、日本人の言葉の受け入れ方を反映した文化的な選択であったことがわかります。


現代における「秘露」の扱い

今日の日本では国名はすべてカタカナで表記されます。したがって、「秘露」と書くことはほとんどありません。しかし、以下のような場面で目にすることがあります。

現代で「秘露」を使う場面

場面具体例
歴史的文献明治期の新聞、外交文書
文学作品漢詩や小説での表現
学問研究外来語表記史の研究対象
特殊表現芸術やデザインにおける演出

現代人にとって「秘露」は日常的ではありませんが、言語史の一部としての価値を持ち続けています。


国名以外の外来語の当て字

当て字文化は国名だけでなく、生活の中の外来語にも広がりました。代表的なものを整理すると次の通りです。

外来語の当て字例

外来語当て字現代の表記特徴
コーヒー珈琲コーヒー音と同時に飲料の雰囲気を表現
タバコ煙草タバコ意味と音が偶然一致
ビール麦酒ビール原料を反映した当て字
パン麺麭パン難解な当て字で現在は使われない
チョコレート貯古齢糖チョコレート漢字数が多く普及しなかった

このように、日本人は新しいものをまず漢字で表そうとしたのです。


外国人にとっての理解のポイント

外国人から見ると、「秘露」という表記は不思議に感じられるかもしれません。意味が国と関係していないため、混乱を招く可能性があります。しかし、これは日本語独特の文化的慣習であり、理解の鍵は次の通りです。

  • 音が優先されている
  • 意味は重視されていない
  • 歴史的背景がある
  • 現在は使われないが文化的価値を持つ

この視点を持つことで、外国人も日本語の当て字文化を理解しやすくなるでしょう。


まとめ

ペルーを「秘露」と書くのは、意味ではなく音を基にした当て字であり、日本が外国語を取り入れる際の工夫の一例です。これはペルーに限らず多くの国名に見られる特徴であり、日本語の歴史や文化の中で重要な位置を占めています。

現代では「ペルー」とカタカナで書くのが一般的ですが、「秘露」のような表記を知ることで、日本語の文字文化の奥深さを感じることができます。言葉を取り入れる際に工夫を重ねてきた日本人の姿勢を理解することは、日本語を学ぶ外国人にとっても興味深い発見となるでしょう。