なぜエクアドルは「厄瓜多」と漢字で書かれるのか?当て字の由来と日本語文化を解説

借用語

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

エクアドルは日本語で「厄瓜多」と表記されることがあります。この表記は漢字の意味ではなく、国名の音を近い漢字で置き換えた当て字です。本記事では、この独特な表記が生まれた理由や日本語における当て字文化の背景を、外国人にもわかりやすく紹介します。

エクアドルの漢字表記「厄瓜多」とは

エクアドルを「厄瓜多」と表記するのは、発音を漢字で表した当て字の一例です。音を近づけることが目的であり、漢字の意味を強調するわけではありません。

  • 厄=「エク」
  • 瓜=「クア」
  • 多=「ドル」の語尾音に近い

このように音を重視して置き換えた結果が「厄瓜多」です。漢字の持つ意味をそのまま解釈すると「不運・瓜・多い」となりますが、これは国の特徴を示すものではありません。


当て字としての表記の特徴

外国地名の当て字には音訳型意訳型があります。エクアドルは前者にあたり、意味は持たずに音を反映した表記です。

種類特徴
音訳型音に近い漢字を選ぶ厄瓜多(エクアドル)
意訳型国や地域の特徴を意味で表す日出(日本)など
融合型音と意味を合わせる墨西哥(メキシコ)=音+「西の国」の意味

エクアドルは純粋に音に基づく音訳型のため、漢字から意味を読み取る必要はありません。


当て字が広まった歴史的背景

明治から大正にかけて、外国の国名はしばしば漢字で表記されました。理由は、当時はカタカナより漢字のほうが公式文書や新聞で権威があるとみなされたからです。

国名(カタカナ)当て字表記読み方
アメリカ亜米利加あめりか
イギリス英吉利いぎりす
フランス仏蘭西ふらんす
ドイツ独逸どいつ
エクアドル厄瓜多やくうた

こうした表記は今日では使われませんが、古い文献を読むと頻繁に登場します。


漢字の意味をそのまま解釈してはいけない理由

当て字では音が重視されるため、意味をそのまま解釈するのは誤解のもとになります。

例を挙げると

  • 厄=災難の意味だが、ここでは単に「エク」の音を表す
  • 瓜=果物を意味するが、発音上「クア」に近いから選ばれた
  • 多=数量を意味するが、「ドル」の音に対応

このように、意味を読む必要はなく、音だけに注目するのが正しい理解です。


当て字が使われた国名の一覧

外国名の当て字にはさまざまなパターンがありました。以下の表に示すように、当時の日本人が外国をどう捉えていたかを知る手がかりにもなります。

国名当て字表記特徴
ペルー秘魯「秘」の文字で未知の国を連想させる
アルゼンチン亜爾然丁音の再現を優先
カナダ加奈陀音の響きをそのまま反映
メキシコ墨西哥音に「西の国」という意味を融合

当て字文化の広がり

当て字は国名に限らず、企業名や商品名にも広く使われました。

名称当て字表記備考
コカ・コーラ可口可楽「おいしい」「楽しむ」の意味を込める
タバコ煙草直訳型の当て字
アルコール阿爾谷児音を中心に置き換えた表記

エクアドルの「厄瓜多」も、こうした流れの中で誕生した一例といえます。


外国人に説明するときのポイント

外国人に当て字文化を説明する場合、次のように伝えると誤解を避けられます。

  1. 当て字は音を表すための工夫である
  2. 昔の日本ではカタカナより漢字が権威ある表記だった
  3. 現在はカタカナ表記が主流だが、当て字は歴史的遺産として残っている

このように整理して説明すれば、外国人も「厄瓜多」をユニークな文化的表現として理解できます。


まとめ

エクアドルを「厄瓜多」と表記するのは、発音を日本語に近づけるための当て字であり、漢字の意味は関係ありません

現代では「エクアドル」とカタカナで書くのが普通ですが、当て字は日本語が外国文化を受け入れる際の工夫として貴重な歴史を物語っています。

外国人に説明する際には「日本では昔、カタカナの代わりに漢字を使った」という点を強調すると、より理解されやすいでしょう。