日本語ではマレーシアのことは馬来西亜(馬国)と表記!なぜ「馬」なのか?その音訳のルーツを徹底解説

借用語

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

日本語では外来語をカタカナで表記するのが一般的ですが、マレーシアを「馬来西亜」や「馬国」と漢字で書く例も見られます。なぜこのような表記が存在するのでしょうか。この記事では「馬」が使われる理由を歴史的な背景や言語の仕組みから解説します。

漢字で「マレーシア」をどう表記するのか

「馬来西亜」や「馬国」という言葉を目にしたことがある日本語学習者は多いかもしれません。これらはマレーシアを表す漢字表記ですが、その意味を解釈しようとすると、かえって混乱する可能性があります。というのも、これらの漢字には個別の意味があるものの、実際にはそれぞれの音を模倣しているに過ぎないからです。

「馬来西亜」は「マ」「レ」「シ」「ア」の音に対応する漢字をあてたものです。「馬」は「マ」、「来」は「レ」、「西」は「シ」、「亜」は「ア」にそれぞれ対応します。これらの文字を使うことで、マレーシアという発音に近づけているわけです。つまり、これは意味を理解するための文字列ではなく、発音を再現するための手段として使われているのです。

こうした漢字表記は中国語の表記習慣の影響を受けたもので、日本語でもかつてはこの方法が頻繁に利用されていました。以下に他国の表記例もまとめました。

国名漢字表記音訳の元となった理由
マレーシア馬来西亜「マ」=馬、「レ」=来、「シ」=西、「ア」=亜
アメリカ米国(亜米利加)略称は米国、音訳では亜米利加
イギリス英国(英吉利)略称は英国、音訳では英吉利
フランス仏国(法蘭西)略称は仏国、音訳では法蘭西

なぜ「馬」が使われるのか

「馬」と聞くと、多くの人は動物の馬を想像します。しかし、マレーシアの表記における「馬」はそうした意味とは無関係です。ここで重要なのは「馬」の意味ではなく、その発音にあります。「マレーシア」の「マ」という音を表すのに最も適した漢字として、中国語圏では「馬(mǎ)」が用いられます。日本でもこの音訳漢字の手法を取り入れた結果、「馬来西亜」という表記が誕生しました。

これは決して「馬」がマレーシアと何らかの象徴的な関係を持っているからというわけではありません。完全に音の近似によって選ばれた漢字です。中国語においては、古くから外国の地名や人名を取り込む際に「意味」ではなく「音」に重きを置いた表記が行われてきました。その結果として、意味的なつながりがない文字が並ぶことになっても、読み方が近ければ良しとされてきたのです。

日本語における外来語の表記とその仕組み

現代の日本語では、外来語の表記には主にカタカナが使われます。これは、音だけを正確に伝えることを目的としており、意味は基本的に含みません。一方で漢字表記は、意味を含むことが前提の表記体系ですが、音訳の際にはその意味を無視し、音の近さを優先する手法が用いられます。

つまり、「馬来西亜」のような表記は、漢字の形や意味ではなく、発音を写し取るための技術であるといえます。これは古い文書や新聞などで頻繁に使用されていた方法であり、現在でも学術的な文脈では時折登場します。

表記方法特徴主な使用例
カタカナ音を忠実に表す、意味は含まない日常の言語、報道、広告
漢字(音訳)音に近い漢字を当てる、意味は重視しない歴史資料、学術文献、新聞など
漢字(意訳)意味を反映させるが発音は異なる場合あり古典文学、仏教文献など

漢字文化圏における表記の違い

同じアジアの漢字文化圏でも、マレーシアの表記には違いがあります。たとえば、中国では現在でも「馬来西亜」やその略である「馬国」という表現が標準的に使用されています。台湾や香港では、繁体字で「馬來西亞」と表記されます。これらの地域では、新聞や公的書類でもこの表記が一般的です。

一方、韓国ではハングルを使用して「말레이시아」と表記します。漢字での表記は教育的、歴史的な文脈に限られる傾向があります。日本では戦前までは漢字での表記が主流でしたが、戦後になるとカタカナ表記が定着しました。

地域表記方法備考
中国本土馬来西亜、馬国簡体字による音訳
台湾・香港馬來西亞、馬國繁体字が用いられる
日本マレーシア、馬来西亜カタカナが主流、漢字は歴史的・専門的文脈で使用
韓国말레이시아ハングル表記が一般的

加えて、日本語学習者にとっては、こうした漢字の音訳手法を知ることは、文字文化の特性を理解する上で非常に有意義です。外来語をどのように取り入れるかは、その言語の柔軟性や文化的背景を反映しており、国ごとにアプローチの違いが見られます。

まとめ

日本語でマレーシアを「馬来西亜」と表記するのは、中国語に由来する音訳表記の一環です。「馬」は「マ」の音を表すだけであり、意味的なつながりはありません。このような音訳漢字は、外来語を表現する際に意味を犠牲にしてでも発音の近似を重視するという考え方に基づいています。

表記の手法は文化や言語の価値観によって異なり、日本語ではカタカナが主流である一方、漢字表記も歴史的背景や学術的文脈で今も存在感を保っています。言語を学ぶ外国人にとっては、こうした多様な表記手法を知ることで日本語理解が一層深まるでしょう。

この表記法を理解することは、日本語の構造だけでなく、日本がどのように外来文化を受け入れてきたかを知る手がかりにもなります。日常会話では登場しにくい表現であっても、日本語の豊かさを体感できる一面です。