イランの漢字表記「伊朗」「伊蘭」の違いと由来をわかりやすく解説!日本語の外来語音訳の歴史

借用語

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

「伊朗」と「伊蘭」は、どちらもイランを意味する漢字音訳であり、選ばれた文字には歴史的・文化的な理由があります。
時代ごとの翻訳方針や中国語の辞典を参照した影響により、二つの表記が併存し、やがてカタカナの「イラン」に統一されていきました。

日本語における外来地名の漢字表記の背景

明治から昭和初期にかけて、日本では外国地名をカタカナではなく漢字で表記することが多くありました。これは中国から伝わった漢字音訳の文化を受け継いだものです。
音訳の際には、現地語の発音に近い音を持つ漢字を選び、組み合わせて地名を表現しました。この方法は、当時の新聞、外交文書、地図作成などで広く用いられています。

時代主な表記方法特徴
江戸末期〜明治前期中国由来の漢字音訳「伊蘭」など中国語に近い表記が多い
明治後期〜昭和初期日本独自の音訳も混在「伊朗」が増える
戦後カタカナ表記統一「イラン」が定着

このように、漢字表記は単なる音写ではなく、時代や文化交流の変化を反映したものでした。


「伊朗」と「伊蘭」の違いと意味

「伊朗」と「伊蘭」は、いずれもペルシャ語 Iran の音を表す表記ですが、選ばれた漢字や背景には違いがあります。

表記漢字の意味音の由来使用の背景
伊朗伊=イ、朗=ラン(明るい、朗らか)Iran の「イラン」明治期以降の日本の新聞・公式文書で普及
伊蘭伊=イ、蘭=ラン(蘭=植物のラン)同じく「イラン」中国語の表記習慣の影響を受けた時期に使用

伊朗は響きが柔らかく知的な印象を与えるため、外交や報道の場で使われやすくなりました。
一方、伊蘭は中国語で広く使われた表記で、日本も初期にはこれを採用していました。


複数の表記が存在した理由

表記の揺れが生じた背景には、中国語の影響、日本国内の統一基準の欠如、時代ごとの言語政策の変化があります。

原因詳細
中国語の影響当時の日本の地名音訳は中国語の辞典や地図を参照することが多く、「伊蘭」がそのまま使われた。
新聞・外交文書の統一の遅れ明治〜昭和初期は新聞社ごとに表記が異なり、「伊朗」「伊蘭」が混在。
戦後のカタカナ統一外務省が外来地名をカタカナに統一する方針を採用し、「イラン」に一本化。

この表記の混在は、歴史資料や古地図を調べる際に興味深い発見をもたらします。


現代における使用状況

現代の日本では、公式文書や報道で「伊朗」「伊蘭」を使うことはほとんどありません。しかし、歴史書、古文書、古地図の解読では依然として登場します。また、文学作品では時代背景を演出するために意図的に漢字表記が選ばれることがあります。

用途現代での例
歴史研究明治期の外交文書や新聞記事の引用
文学作品歴史小説や舞台設定の再現
文化資料古地図や年表の復刻

まとめ

「伊朗」と「伊蘭」は、どちらもイランの音を日本語に漢字で置き換えた表記であり、時代や文化交流の影響を受けて使い分けられてきました。
現代ではカタカナの「イラン」が一般的ですが、これらの漢字表記は過去の日本と世界の交流を映す歴史的証拠でもあります。
漢字一文字一文字に込められた意味や響きは、単なる音訳以上の文化的価値を持っています。