日本企業の倒産件数、2025年上半期11年ぶり高水準に。人手不足倒産は最多更新

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2025年上半期、日本国内の企業倒産件数が11年ぶりの高水準となりました。特に人手不足が直接の原因となる倒産は過去最多を更新しており、業種や地域を問わず経営環境が厳しさを増しています。本記事では倒産件数の推移や業種別影響、人手不足倒産の背景と今後の展望について詳しく解説します。

2025年上半期 日本企業倒産が11年ぶり高水準に

2025年1月から6月までの全国企業倒産件数は約4200件に達し、前年同期比約15パーセント増加しました。以下の表は過去5年間の倒産件数推移を示したものです。

年度倒産件数
2021年3100件
2022年3300件
2023年3650件
2024年3650件
2025年4200件

この件数はリーマンショック後の2014年以来の高水準であり、コロナ禍後の政府支援終了、原材料費や光熱費の高騰、金利上昇など複合的要因が背景にあります。特に金融緩和終了後の借入返済負担増が資金繰りを直撃し、中小企業の体力不足を露呈しました。

倒産した企業の大半は従業員30名未満の小規模事業者で、経営改善余力が乏しく資金ショートまでの時間が短いことが特徴です。

人手不足倒産が過去最多に至った背景と実態

2025年上半期の人手不足倒産は約180件で、前年同期比1.5倍と過去最多を更新しました。業種別では建設、運輸、サービス業に集中しています。

業種人手不足倒産件数前年同期比増加率
建設業70件+20%
運輸業50件+30%
サービス業40件+25%
製造業20件+10%

人手不足倒産の背景には、少子高齢化による労働力人口減少、若手層の業界離れ、大手企業との賃金格差による採用競争敗北があります。建設業では技能者不足で現場稼働停止、運輸業ではドライバー不足による配送効率低下、サービス業ではシフト確保不能から営業時間短縮で売上減少といった具体被害が出ています。

加えてコロナ禍離職者の復帰率低迷が影響し、地方では介護施設や運輸業の運営停止事例が報告されています。

業種別倒産動向と人手不足が与える影響

2025年上半期の業種別倒産動向は以下の通りです。

業種倒産件数前年同期比
サービス業1350件+20%
建設業920件+15%
製造業800件+10%
小売業600件+5%
運輸業480件+8%

サービス業は飲食、宿泊、介護、IT派遣など幅広い分野で倒産が増加しました。需要回復に対して人材確保が追い付かず、営業制限や受注制限による売上減少が直結しています。建設業では人材不足で工期遅延や契約違約金が発生し、収支悪化で倒産する例が目立ちました。

運輸業ではドライバー高齢化と若手入職不足で配送量維持が困難になり、取引停止や廃業に至る事例が多く報告されています。

企業規模別 倒産企業の特徴と課題

倒産企業を規模別に見ると以下の特徴があります。

従業員数倒産割合主な原因
5人未満45%資金繰り余力不足
5~30人40%人件費負担増、人材確保難
30人以上15%売上減少、固定費過大

従業員5人未満の零細企業では金融支援終了後の資金繰り悪化が即倒産につながりやすく、5~30人規模では人材不足と人件費高騰のダブルパンチが重荷となっています。

人手不足倒産を防ぐために企業が取るべき対策

人手不足倒産を防ぐには採用強化、定着率向上、業務効率化を総合的に進める必要があります。具体策は以下です。

・賃金水準の見直しと福利厚生充実
・外国人材採用拡大と受入体制整備
・シニア人材活用と健康経営導入
・DX推進による業務フロー最適化
・キャリアアップ研修、OJT制度強化
・多能工化やジョブローテーション

建設業では特定技能人材を活用して長期雇用安定を実現する企業が増えています。運輸業では配車効率化システム導入でドライバー負担軽減を図り、サービス業ではキャリアパス明確化と正社員登用比率引き上げにより離職率低下を実現する事例もあります。

心理的安全性と若手定着が今後の鍵

人材定着には賃金や休日だけでなく、心理的安全性の確保が重要です。20代前半では「給与よりも職場環境」を重視する傾向が強く、上司とのコミュニケーション不足や成長実感欠如が離職理由となっています。定期的なキャリア面談やフィードバック文化の定着が必要であり、これが結果として倒産リスク低下に繋がります。

まとめ

2025年上半期、日本企業の倒産件数は11年ぶり高水準となり、人手不足倒産も過去最多を更新しました。少子高齢化による労働力人口減少は今後も続くため、採用活動だけでなく業務効率化、DX推進、既存人材定着、心理的安全性の確保まで包括的に取り組むことが重要です。人材戦略はコストではなく、企業存続を支える最大の投資であることを再認識すべき時期に来ています。