日本の部活動に潜む「暴力といじめ」世界基準から見た異常性と改善策

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監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

日本の学校部活動では、指導者や先輩による暴力やいじめが繰り返し報道され、社会問題として注目されています。海外のスポーツ指導と比べたとき、この体質は果たして異常なのでしょうか。本記事では、歴史的背景・国際比較・構造的要因を踏まえ、現実的な改善策を提案します。

日本の部活動の歴史的背景と暴力の定着

戦後の教育改革で広がった部活動は、本来、生徒の人格形成や協調性を育む場でした。ところが、高度経済成長期に入ると競技志向が強まり、勝利至上主義が定着します。「厳しい指導が良い結果を生む」という価値観が広がり、体罰や威圧的な言動が正当化されました。特に1970〜1990年代には日常的な暴力指導が横行し、これが“伝統”として受け継がれる構造を生みました。現在もこの価値観は完全には払拭されず、暴力やいじめの温床となっています。


世界との比較に見る日本の特殊性

海外では学校外の地域クラブがスポーツ活動を担い、資格を持つコーチが指導します。一方、日本は教員が顧問を務め、専門研修を受けていない場合が多く見られます。上下関係を重視する文化も、問題を訴えにくい環境を作ります。以下は日欧米の違いを示した比較です。

項目日本欧米諸国
指導者資格教員中心で資格不要専門ライセンス必須
体罰一部で黙認法的に全面禁止
組織形態学校内完結地域クラブ主体
上下関係年功序列が強い実力や年齢混合

暴力が発生する構造的要因

暴力やいじめは偶発的ではなく、複数の要因が絡み合っています。

要因説明
閉鎖的運営学校内で完結し外部監視が弱い
序列文化上下関係を絶対視し異議を唱えづらい
成果至上主義勝利を最優先し過剰な練習や圧力が生まれる
告発抑止被害者や保護者が進学や推薦への影響を恐れる

海外の取り組みと成果

海外では制度的な暴力防止策が整っています。

国・地域主な取り組み成果
イギリスコーチ資格義務化・倫理研修必須重大事案の減少
アメリカ第三者機関が通報受付・調査早期対応で被害抑制
オーストラリア児童保護法をスポーツ活動に適用法的処分例の増加

これらは日本にも導入可能で、制度化すれば再発防止に寄与します。


日本の改善に向けた具体的提案

  • 指導者資格制度の創設
    スポーツ指導法・人権保護・心理的ケアを含む研修を義務化。
  • 外部監査制度の導入
    第三者による運営評価と改善指導を定期的に実施。
  • 地域クラブ化の推進
    学校外の活動機会を増やし、閉鎖性を緩和。
  • 被害者保護の強化
    匿名通報制度、カウンセリング体制を整備。
  • 評価軸の多様化
    成果だけでなく、努力や協調性を評価対象に含める。

暴力防止に必要な環境づくりの要素

項目具体策
人材育成指導者養成講座・定期研修
監視体制外部委員会によるチェック
意識改革勝利至上から成長重視へ
被害対応迅速な通報・調査・保護

まとめ

日本の部活動における暴力やいじめは、歴史的背景と制度の不備が絡み合った構造的な問題です。海外との比較では閉鎖性と上下関係の強さが際立ち、異常性が明らかになります。改善には制度改革と意識改革の両面が必要です。未来の部活動は、生徒一人ひとりの安全と尊厳を守る場であるべきであり、そのための変革を社会全体で進める必要があります。